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<弁理士コラム>核融合発電の実用化に向けて
今年(2023年)1月に開催されたダボス会議では、次の投資となるグリーンテクノロジーの1つとして核融合発電が議論された。
核融合発電は、原子核同士を合体(融合)させてエネルギーを生み出して発電する技術である。発電時に二酸化炭素を出さず、燃料の供給を停止すれば反応が止まるため原子力発電に比べて安全である。そして、原子力発電の高レベル放射性廃棄物にあたるものが核融合発電では生じない。また、燃料となる重水素やトリチウムは海水中に豊富に存在するため、資源が少なく海に囲まれた日本では理想的なエネルギーである。
核融合発電に関する記事を調べて、ずいぶん昔の高校生時代を思い出した。当時の物理の教科書では、一番最後の章で核物理の内容があった。私の高校はそれほどの進学校ではなかったので授業の進みが遅く、授業で扱われた記憶があまりない。そこで自分で教科書を読んで学んだのだが、核物理は未来の話のように思えて非常に興味を持った覚えがある。そんなこともあり、大学では機械工学を学んだ後に大学院では原子核工学を専攻した。このような経緯もあり、核融合と聞いて昔の記憶が蘇ったのである。当時は夢のエネルギーという扱いで、発電利用としてはまだまだ先といった感じだった。
核融合発電は石油や天然ガスを不要とするため安全保障上も非常に重要である。このため、核融合発電について、米国は2022年3月に商用発電に向けた10年戦略をつくると宣言した。それに先立ち英国は2021年10月に国家核融合戦略を公表している。中国は、核融合工学試験炉を建設し、これを2030年代までに発電炉に改造する計画を推進中である。このように、世界的に核融合発電の計画がホットになっている。
これに対して、日本政府は2月28日に有識者会議を開いて核融合発電の計画を前倒しすることを決めた。そして、公的な補助などで民間の参入やスタートアップの育成を後押しする方針を示した。
となると弁理士という職業上、特許出願がどうなっているのか気になってしまう。2023年2月22日の日本経済新聞の記事によると、核融合技術に関する特許の競争力については、現在のところ中国、米国、英国に次いで日本は4位なのだそうである。従前から日本は多国籍プロジェクト「国際熱核融合実験炉」(ITER)に参画して核融合に関する技術を蓄積してきたのだから、潜在能力はありまだまだこれからであると期待したい。ぜひ民間企業やスタートアップから有望な発明が生まれ、日本の実力を再び世界に示して欲しいものである。その際に弁理士として微力ながらお手伝いできれば幸いである。
弁理士 藤田考晴