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<弁理士コラム>イノベーションボックス税制について
イノベーションは、企業の競争力を保持し、市場に新たな価値を提供するために不可欠な要素です。今回は、このイノベーションを促進して企業の成長を後押しする「イノベーションボックス税制」についてお話しします。
イノベーションボックス税制とは、企業が特許や著作権などの知的財産を活用した利益に対して低税率を適用する税制のことを指します。パテントボックス税制と呼ばれることもあります。イノベーションボックス税制によって、企業の研究開発活動を促進し、新しい製品やサービスの創出を奨励することが期待されます。
フランスや英国などの欧米を中心に、イノベーションボックス税制は多くの国で導入されています。フランスが最も早く、2001年に導入しています。アジアではシンガポールが2018年に導入し、オーストラリアでも現在検討中です。例えば、英国では、法人税率が25%であるのに対して、知財関連収入に対しては10%の税率で済みます。つまり、特許で保護された製品の売り上げについて、25%の法人税が課されていたものが10%で良いということになります。例えば製造業の売上高経常利益率が4~5%と言われていることを考慮すると、この優遇税制はかなりのインパクトです。
日本経済新聞(「知財収入に税優遇案 経産省、研究開発投資促す」,2023年6月18日電子版)や朝日新聞(「特許の収益 税優遇検討」,2023年7月3日朝刊1面)の記事によると、ようやく日本でもイノベーションボックス税制の導入の動きが出てきました。
このような事情から、イノベーションボックス税制の導入を見越して、今からでも遅くはないので知的財産による自社製品の保護について検討し、不十分な場合は特許等による保護を図るべきです。これからは、特許権の取得は、自社製品を保護するだけでなく、会社の利益にも直結するようになってきます。
日本のイノベーションボックス税制の適用対象がまだ具体的に明らかにされていませんが、AIや半導体といった有望な技術は間違いなく対象となります。
また、著作権で保護されたソフトウェアも対象になると言われていますので、ソフトウェア会社の方も、我々は製造業ではないからイノベーションボックス税制は関係ないと早合点せず、ソフトウェアの著作権登録についても検討して下さい。
弁理士 藤田考晴