NEWS

新着情報

RSSを購読する

<弁理士コラム>中国における不使用取消請求の最近の動向と対応策

1. はじめに
中国で商標権を取得する際、先行登録商標が障害となるケースが少なくありません。その解決策の一つとして、不使用取消請求(3年不使用取消)が利用されます。しかし、近年、この制度を悪用するケースが増加しており、中国国家知識産権局商標局(CNIPA)は、悪意の疑いがある請求への対応を強化しています。

2. 中国における不使用取消請求制度の概要
不使用取消請求制度を行う場合、請求対象の商標が使用されているか簡単なサーチを行い、不使用の証拠を添付して請求書類をCNIPAに提出します。不使用取消請求は、誰もが請求できるため、請求対象の商標権と対立構造を持つ真の請求人の名称を用いずに、ダミーによる請求が一般的に行われています。

不使用取消請求がなされると、商標審査部(国家知識産権局商標局審査処)において方式審査が行われます。請求に不備や正当性がないと認められた場合には、補正命令が発行され、不備などが解消されない場合には請求が却下されます。一方、請求が認められた場合には、商標権者は2カ月以内に使用証拠を提出する義務があります。証拠が不十分な場合は商標権が取消されます。また、商標権者により、使用証拠が提出された場合には、権利が維持されます。

商標権が維持された場合、不使用取消請求の請求人は、商標審判部(国家知識産権局商標局評審処)に不服審判を請求することができます。不服審判では、使用証拠に対してより厳しい審理がされます。したがって、審査段階で商標権を取り消すことができなかったケースでも審判に進めば取消が可能なケースも少なくありません。このため、弊所では、審査段階で商標権を取り消すことができなかったとしても、あきらめずに不服審判に進むことを提案しています。

3. 最近の動向(不使用取消請求の濫用と請求棄却)
不使用取消請求は、誰でも請求することができます。このように、誰でも簡単に請求ができてしまうことから、近年、不当といえる悪意の請求が著しく増加しています。CNIPAは、これを問題視し、以下のようなケースについては、悪意の疑いがある請求として、補正指令を発行し、正当性が証明されない場合は請求を却下する傾向が強くなっています。また、悪意が高いと判断された場合には、補正指令が発行されることなく、直ちに却下されるケースもあります。

(1)同一商標に対する繰り返しの請求や一度に何通もの請求を行う場合
(2)商標代理事務所による請求の場合
(3)国有企業や公益目的の商標に対して請求する場合
(4)同一名義で大量に請求を行う場合(例えば、1日に5件以上)

4. 対応策
日本のお客様が中国で不使用取消審判をされる場合、商標代理事務所による請求またはダミーの個人名での請求がよく行われます。この場合、上記(2)に当たり、請求が却下される可能性があります。商標代理事務所による請求の場合やダミーによる請求の場合でも、既存商標権が不使用であることをきちんと調査をし、その調査結果を添付して不使用取消請求を行うことで、補正指令の発行等を免れることができます。

請求人を誰にするか、どの程度の不使用調査資料を添付するかについては、ケースバイケースであり、慎重に検討する必要があります。

弊所では、中国代理事務所との強固な連携により、適切なアドバイスを提供しております。不使用取消請求に関してご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。

弁理士 川上美紀

弁理士川上美紀のプロフィール及びお問い合わせはこちら