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<弁理士コラム>建築の著作権について知りたい
Q:建築の著作権について知りたいのですが?
A: 建築に関する知的財産権は、著作権以外にも特許権、実用新案権や意匠権などがありますので、あらゆる権利に対して目を配りながら、自分の保護したいアイデアやデザインに関する権利は著作権が適しているのか、それとも他の特許権、実用新案権や意匠権などが適しているのかを確認しておきたいところです。
(1)建築物の著作権と設計図面の著作権
著作権法には、小説や論文などの言語の著作物、音楽の著作物、絵画や彫刻などの美術の著作物などが例示されており、建築に関しては、「建築の著作物」(著作権法10条1項5号)と、「地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物」(著作権法10条1項6号)が例示されています。
すなわち、建築の著作権には、実際に建築された「建築物」の著作権と、「設計図面」の著作権の2種類があります。
なお、過去の裁判例によると、「建築物」の著作権については、住宅やビル、工場、倉庫など全ての建築物について著作権が発生するとはされていません。一般に、「建築物」が著作権によって保護されるには「芸術性」を要するとされています。例えば、次の裁判例が知られており、この事件では、グッドデザイン賞を受賞した住宅について、著作権が発生しないと判断されました。
・大阪高判平16・9・29グルニエ・ダイン事件(グッドデザイン賞モデルハウス事件)
したがいまして、芸術性を考慮して、自分が権利対象としたい建築物に著作権が発生するかどうかの判断を行う必要があります。
(2)建築物の意匠権による保護
実用的な建築物については、意匠権を取得することで建築物に関する自己のデザインを保護できる可能性があります。
意匠権は、芸術性の有無に関わらず、既存のデザインと対比して創作が容易ではないと認められれば発生する権利です。芸術性の有無について判断が分かれやすい著作権に比べて、より確実に権利を手に入れることができます。
意匠権の取得は、自然に発生する著作権と異なり、特許庁に対する専門的な手続きが必要ですので、特許事務所(弁理士)にご相談されることをお勧めいたします。
弁理士 三苫 貴織