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<弁理士コラム>新規性喪失の例外
最近では、キャッシュレス決済がすっかり浸透し、ATMで現金を引き出す機会もめっきり減りました。だからというわけではないですが、先日久しぶりにATMで現金を引き出した際に、キャッシュカードだけ回収し、引き出した現金を取り忘れてしまいました。とても焦りましたが、調べてみると、ATMで取り忘れた現金はそのままATMに回収され元の口座に戻されるようです。口座を確認してみると確かに戻っているようで、一安心しました。ATMには、現金の取り忘れをリカバリする大変ありがたい機能があるようです。
リカバリといえば、知的財産の分野でもリカバリ制度が存在します。
特許権や意匠権等を取得するための要件の一つに、特許権を取得したい発明や意匠権を取得したい意匠が、出願時に世の中に知られていないものでなければならない、という要件があります。せっかく新しい発明や意匠の創作をしたとしても、特許出願や意匠登録出願する前に、発明や意匠を誰かに知られてしまった場合(このような場合のことを「新規性を喪失した場合」といいます)には、この要件を満たしていないとして、原則として特許権や意匠権を取得することができなくなってしまいます。新規性を喪失する場合には、様々な場合がありますが、例えば、発明や意匠を学会等で発表した場合や、発明や意匠が適用された製品を広告に載せたり販売したりした場合等があります。
しかしながら、新規性を喪失してしまった場合でも、これをリカバリできる制度が存在します。この制度のことを、「新規性喪失の例外」といいます。新規性を喪失した場合であっても、新規性を喪失した日から1年以内に新規性喪失の例外を利用して出願すれば、新規性を喪失していないものとみなされます。したがいまして、すでに発表や販売等している製品であっても、この制度を利用することで、特許権や意匠権を取得できる可能性があります。ただし、新規性喪失の例外の適用には、所定の要件を満たす必要がありますので、まずは特許事務所等の専門家に相談することをお勧めします。弊所でも応じますので、お気軽にご相談ください。
弁理士 藤澤 厚太郎