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<弁理士コラム>複数意匠一括出願
今年(令和3年)の4月に改正意匠法が施行され、複数意匠一括出願制度が導入されました。施行から半年以上が過ぎましたが、ここでどのような制度が改めて整理してみたいと思います。
複数意匠一括出願制度とは、複数の意匠登録出願を一つの願書により一括して行うことを可能とし、複数の意匠を出願する際の手続きを簡略化することを目的として作成された制度です。
この制度は、近年製品に一貫したデザインコンセプトを用いてブランド価値を高める企業が増えている中、一つの出願に一つの意匠しか含めることができない従来の制度では出願手続きの負担が生じていたことから、このような問題を解消するために導入されました。あくまでも出願手続きの簡略化のための制度ですので、一つの意匠に対して、一つの意匠権を発生させるという原則は従来と変わりません。
複数意匠に含めることができる意匠の範囲に制限はありません。したがいまして、各意匠が類似している必要はなく、また、各意匠の創作人が異なっていても問題ありません。
また、複数意匠の中に関連意匠の要件を満たしている意匠がある場合には、当該意匠同士を関連意匠とすることができます。
次に、具体的な願書の記載ですが、全ての意匠に共通する事項(例えば、出願人や代理人の情報等)については願書の冒頭部分に記載します。
それ以外の事項(例えば、意匠に係る物品、創作者情報、意匠に係る物品の説明、意匠の説明等)については【意匠1】【意匠2】等として、意匠毎に記載します。
では、実際に複数意匠一括出願を行うとどのようなフローで手続きが進むのでしょうか。
複数意匠一括出願を行うと、まず一括出願の全体に対する手続番号が通知されます。これは、後述する意匠毎に通知される出願番号とは別のものです。
全体の手続番号が通知されると次に方式審査が行われ、方式審査を通過すると、複数意匠一括出願特有の手続きは終了します。
この後は、複数意匠一括出願に含まれる意匠毎に分かれ、通常の意匠登録出願と同様のフローを辿ります。具体的には、意匠毎に、出願番号が通知されその後に実体審査が行われます。
実体審査の結果が意匠毎に通知され、拒絶理由が存在する意匠については拒絶理由通知が発行され、一方で拒絶理由が存在しない意匠については登録査定がなされます。
登録査定が為された後は、登録料を納付することで登録されます。
最後に、複数意匠一括出願をするに際し、注意すべき点について述べます。
新規性喪失の例外の適用の請求や秘密意匠の請求は意匠毎にすることはできません。新規性喪失の例外の適用や秘密意匠の請求をする場合には、一括出願全体に対して請求することとなります。
なお、新規性喪失例外や秘密意匠の請求を行う場合、請求に必要な書類(新規性喪失の例外適用証明書や秘密を請求するための必要事項を記載した書面等)については、1回提出すれば一括出願に含まれるすべての意匠に対して提出されたものとみなされますので、手続を簡略化することができます。
また、複数意匠一括出願には、分割出願や補正却下決定後の新出願等の出願日が遡及する出願は含めることができない点にも留意する必要があります。
なお、出願手数料は、出願数(意匠数)×16,000円であり、通常の出願を複数行う場合と同じ料金ですので、複数意匠一括出願を行う料金面でのメリットはありません。
弁理士 藤澤 厚太郎