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<弁理士コラム>拒絶理由通知書
特許出願をしたことがある方ならご存知かもしれませんが、特許出願を行うとその後の過程で「拒絶理由通知書」というものが送られてくることがあります。
拒絶理由通知書というのは、審査官等による審査によって特許出願をした発明が特許要件を満たしていないと判断された場合に、どのような理由で特許要件を満たしていないかを出願人に知らせるために送られてくるものです。
「拒絶」というと、日常生活においては強い否定を示す際に用いられる言葉ですので、「拒絶理由通知書」なんてものが来たら、慣れていない人であれば驚いて「ダメなんだ・・・」と権利化を諦めてしまいそうですが、特許出願の過程では拒絶理由通知書が送られてくることは珍しいことではありません。
日本では、最初の通知で登録となる率(すなわち、拒絶理由通知書が発行されることなく一発で登録となる率)は、高くありません。2021年7月~12月のデータでは14.1%です(参考資料:https://www.jpo.go.jp/toppage/pph-portal-j/statistics.html)。逆から言えば、審査の過程において、8割以上の割合で少なくとも1度は拒絶理由通知書が発行されているということになります。
一方で、日本における特許登録率は比較的高い水準(ここ数年75%前後)となっています。これは、拒絶理由通知書に対して所定の期間内に反論を行ったり権利範囲を変更する補正を行ったりすることで、拒絶理由が解消することが多いからです。
このように、拒絶理由通知書が発行されたからと言って決して権利化へ向けて状況が悪くなっているわけではありません。むしろ、拒絶理由通知書が発行されることの利点もあります。
特許要件には、先行技術と似た発明は認められない、との要件がありますので、拒絶理由通知書には権利化したい発明と似た先行技術が挙げられ、当該技術と似ているから登録を認めることができない、といった理由が記載されていることが多々あります。似た先行技術があったということでがっかりする気持ちもあるかもしれませんが、これは権利化したい発明と似た先行技術を特許庁側で見つけてくれているとも言えます。拒絶理由通知書に記載された先行技術と最低限の差別化を図ることができれば、より適切な権利範囲で権利化できることとなります。このような観点からすると、むしろ、拒絶理由通知書が発行されずに登録となった場合には、過度に先行技術との差別化を図ってしまっており、権利範囲を狭くしすぎてしまっている可能性もあります。
このように、拒絶理由通知書というのは、決して悪いものではなく、より適切な権利範囲で権利化をするための一つのステップという見方もできますので、拒絶理由通知書が来たとしても悲観的にならずに落ち着いて対応することが大切だと考えます。
弁理士 藤澤 厚太郎