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<弁理士コラム>入所12年~これまでと、これからと

 筆者がオリーブ国際特許事務所の技術部門で働き始めて、今年(2022年)の10月末で丸12年となり、前職(研究職)での勤務年数の2倍近い期間が経とうとしています。その12年間では弁理士試験合格が最も大きな出来事であり、来年には弁理士登録10年目を迎えます。そこで今回のコラム執筆を機会に、これまでの自分の弁理士としての業務経験を振り返ってみました。

 弁理士という職業を知ったのは、研究者を目指していた大学院生時代です。先日、弁理士制度100周年(1999年)記念切手を家で見つけ、当時、「弁理士」に何らかの興味を持っていたのだな、と少々驚きました。
 前職で特許文献の調査経験はあったものの本格的な知財業務経験は無い状態で入所し、配属されたのが外国技術部門です。最初の担当業務は、外国のお客様の特許出願を日本で権利化するための補助業務と、日本のお客様の特許出願を外国で権利化するための補助業務でした。英語で書かれた特許文献を読んだり、外国代理人に送る指示書やコメントを英語で書いたりと、毎日英語と向き合う日々。英語の流暢な読み書きはできない状態で入所しましたが、懇切丁寧なOJT(当時は修正で赤ペンだらけでした)と、なんとか英語を書けるようになりたい(そのためには元となる日本語をきちんと構築できないといけない)、という思いを続けられたことでこれまでやってくることができたと思っています。英語は今も発展途上中ですが。

 技術面では、筆者の専門は有機化学であるところ、担当案件は化学案件ばかりではありません。しかしながら幸い、いろいろなことに広く浅く興味があり、例えば漠然とながら「宇宙」や「医療」に興味を持っていたことが、機械系案件でそちらに近い分野の案件を担当することになった際に案件に積極的に向き合えることにつながったと感じています。「新しいことにワクワクできる」という性分にも助けられ、案件を通して身近な機械のメカニズムをより理解できた、という経験もできました。
 また弁理士の仕事の多くは「書面でのやり取り」、すなわち文章作成が鍵となってきます。ここでは少々(?)理屈っぽい性格が、審査官から示された拒絶理由に対して「論理的に対抗したい」という形で功を奏し、「審査官に納得してもらってこの案件を特許にしたい」、だから説得力のある文章を書こう、と思えた点がうまくはまったようです。電話や話すことは得意ではないのですが、書面でのやり取りが多い仕事であることが筆者にとってラッキーでした。「お客様に分かりやすい文章」、「審査官にこちらの言い分を納得してもらえる文章」を如何に書くか、というのは、この仕事を続ける限りずっと続くチャレンジです。

 振り返ってみると、意図せず身に付いていたことにずいぶん助けられてきたのだな、と強く感じます。上述した点以外にも、趣味の読書からは「文章を読むこと」、「言葉に多く接すること」を体得し、(研究職では成功できなかったものの)納得いくまで考える性格が「一つでも多くの対応案の可能性を考える」、ということにつながった、と思えます。もちろんうまく活かせることばかりではありませんが、子どもの頃からの趣味や興味、別の仕事での経験も、今の弁理士の仕事に活きている気がする・・・伊達にまあまあ長く生きてきたわけではないな、と思え、少しほっとします。
 こうしてみると、「弁理士」という職業は、それぞれの人が持っている種々の経験や知識、能力を活かすことができる仕事なのではないでしょうか。筆者は弁理士という職業に出会えたことにとても感謝しています。これからは、加齢とともに落ちてくるかもしれない能力との戦いが増えてくると予想しています。それに対しては、ここ2年ほどで新しく興味を持ち始めたことへの取り組みを通して、楽しみながら、例えば論理的に考える力を鍛えることができたりしないかな、などと考えています。

 オリーブ国際特許事務所では、いろいろなバックグラウンドや社会経験をもった弁理士や技術者などが所属し、それぞれの専門を活かして活躍しています。理系学部・大学院に進んだけれど実は文章を読んだり書いたりするのが好き、といった学生の方にも、「弁理士」という仕事に興味を持ってもらえれば幸いです。また新しい発明やデザイン、商品のマークなどを思いついたら、お気軽に当所までご相談ください。

弁理士 河合 利恵

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