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<弁理士コラム>メタバースにおける商標の保護について
最近、メタバース(仮想世界)について耳にする機会が増えてきました。それほど遠くない未来にメタバースでも、現実社会と同様に、経済活動が活発に行われることが予想されることから、メタバースにおいてやり取りされる商品やサービスについても商標登録を取得・検討する企業が増えてきています。
例えば、スポーツブランドで知られるナイキは、メタバースにおける商標保護に意欲的な会社の一つとして知られています。ナイキは、米国をはじめとする主要国において既に商標登録出願を行っており、日本では、以下の指定商品等を指定して、商標登録出願(商願2021-132597)が行われています。
- 第9類
仮想商品、すなわち、オンライン上の仮想世界及びオンライン上で使用する履物・運動用特殊靴・被服・帽子・眼鏡・バッグ・スポーツバッグ・バックパック・運動用具・美術品・おもちゃ・身飾品及びこれらの付属品を内容とするダウンロード可能なコンピュータプログラム,コンピュータプログラム(記憶されたもの) - 第35類
仮想商品、すなわち、オンライン上で使用する履物・運動用特殊靴・被服・帽子・眼鏡・バッグ・スポーツバッグ・バックパック・運動用具・美術品・おもちゃ・身飾品及びこれらの付属品の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,オンラインによる仮想商品、すなわち、オンライン上の仮想世界及びオンライン上で使用する履物・運動用特殊靴・被服・帽子・眼鏡・バッグ・スポーツバッグ・バックパック・運動用具・美術品・おもちゃ・身飾品及びこれらの付属品の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,電気機械器具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供 - 第41類
仮想空間で使用するダウンロードできない仮想の履物・運動用特殊靴・被服・帽子・眼鏡・バッグ・スポーツバッグ・バックパック・運動用具・美術品・おもちゃ・身飾品及びこれらの付属品の提供,電子出版物の提供,娯楽の提供
上記商標登録出願は、一部の指定商品・指定役務の表現が不明確であるとして拒絶理由が発行されており、登録には至っていませんが、今後、補正の上登録されれば、具体的な指定商品・指定役務の表現についての指標になるでしょう。
また、メタバースにおける商標の使用・保護の方針については、各国特許(商標)庁において議論されており、韓国などのようにメタバースにおける審査指針が公表される国も見られるようになりました。
例えば、韓国のガイドラインでは、メタバースにおける商品は、コンピュータプログラム等が含まれる第9類として保護し、現実の商品とメタバースにおける商品とは原則非類似と判断されることが明確化されました。
周知著名性を獲得した商標に対しては例外適用があるものの、メタバースにおける商品と、現実の商品とは非類似であるとの解釈は、おそらく他国においても同様のガイドラインになることが予想されます。したがって、メタバースにおける活動を検討している企業については、第9類のバーチャル商品等を指定して商標出願を行う必要があります。
また、メタバースでの活動については、上記9類に加えて、バーチャル商品を取り扱う小売店サービス(第35類)、エンターテイメントサービス(第41類)、オンラインのダウンロード不可能なバーチャル商品とNFT(第42類)、デジタル・トークンを含む金融サービス(第36類)などが各国の特許(商標)庁で審査されており、これらの動向を踏まえ、慎重に指定商品等を選定する必要があります。
このように、メタバース関して、各国にて商標の保護に関する法整備が急ピッチで進められています。
オリーブ国際特許事務所では、日本を始め、各国におけるメタバースにおける商標の保護について情報を収集し、提供して参ります。
弁理士 川上美紀